ミシュラン、新コンセプトの自転車「パリ・ブレスト」
マツダ自転車工業がフレーム設計し、国内向けに200台限定で発売

ミシュランマンと自転車「パリ・ブレスト」

2012年10月24日発表
9万9750円



 日本ミシュランタイヤのライセンス事業を行っているミシュラン・ライフスタイル・リミテッドは10月24日、都内で新製品発表会を開催し、新しいコンセプトの自転車「パリ・ブレスト」を200台限定で国内販売することを明らかにした。2013年3月発売予定で、価格は9万9750円。使用者の体格に合わせたS/M(420mm)、M/L(480mm)の2サイズを用意する。

 「パリ・ブレスト」は、ミシュラン・ライフスタイル・リミテッドがライセンスする自転車の新ブランド「ヴェロ・ミシュラン」の第1弾モデル。クラシカルなスタイルのシティサイクルで、重量はおよそ13kg。高強度・高精度のフレームや、随所に用いられたアルミ素材を活かしたデザインが特徴。タイヤはパンク防止技術「PROTEK HD」を採用するMICHELIN Pilot Sportで、快適な乗り心地の“本物のシティサイクル”を目指した製品としている。

限定200台が販売されるMICHELIN Pilot Sportを装着する

 これまで同社のグッズ商品のデザイン・販売を請け負ってきたM2styleが車体のデザインを担当。競輪やロードレース車両などで定評のあるマツダ自転車工場がフレーム設計を手掛け、海外製を中心としたスポーツモデルの自転車輸入・卸販売を行っている日直商会が販売する。

ミシュラン・ライフスタイル・リミテッドがライセンサーM2styleがデザイン、マツダ自転車工場がフレーム設計、日直商会が販売をそれぞれ担当

“本物のシティサイクルの乗り味にこだわった”1台
 発表会では、初めに日本ミシュランタイヤ 代表取締役社長のベルナール・デルマス氏が登壇。「今日ご紹介するのは、人々のモビリティに貢献したいという私たちの思いがたくさん詰まった新しいライセンス商品」と挨拶し、壇上の「パリ・ブレスト」を公開した。続いて同社執行役員 社長室長の森田 哲史氏が、同社の歴史と絡めて新製品のコンセプトを解説。「創業者の一人であるエドワード・ミシュランが初めて空気入りタイヤの自転車に乗ったときの感動と、空気入りタイヤを装着した自転車でパリ・ブレスト間を往復する世界最古の自転車耐久レースに参戦し勝利したことが、ミシュランの源泉」であるとし、そのときの感動を多くの人に味わってもらいたいこと、この歴史を受け継ぐという意味で今回の製品に「パリ・ブレスト」と命名したことなどを紹介した。

日本ミシュランタイヤ 代表取締役社長 ベルナール・デルマス氏日本ミシュランタイヤ 執行役員 社長室長 森田 哲史氏
ミシュランの歴史を紹介

 次に壇上に立った日直商会 専務取締役の日向 良介氏は、創業者である曾祖父の特に思い入れの深かった取り扱い商品がミシュランタイヤだったことを引き合いに出し、ミシュランの新しい自転車「パリ・ブレスト」の販売を手掛けることに「何か運命的なものを感じるし、必然であったような気もする」と感慨深げに語った。

日直商会 専務取締役 日向 良介氏ミシュランとのかかわり
マツダ自転車工業 代表取締役 松田志行氏

 マツダ自転車工業 代表取締役の松田志行氏も登壇。フレームビルダーとして絶大な信頼を受けている同氏は、値段、デザイン、機能に重点を置いて作られている一般のシティサイクルに対して、「パリ・ブレスト」では「乗り心地に関係する設計寸法、精度、強度にこだわって製作した」と話し、「本物のシティサイクルの乗り味にこだわった」ことをアピール。具体的には、操縦安定性に関わるヘッドアングル、ペダルを回すときの出力に関わるシートアングル、加速に影響するボトムブラケットの高さという3点に特にこだわったという。

 また、トップチューブのヘッド側を縦方向につぶした楕円形状の断面とし、トップチューブとシートステーを一直線につなげることで、1本のチューブがまっすぐに伸びているように見えるデザインを強調。さらに、力のかかりやすい箇所のためダウンチューブには通常太いパイプを用いるが、ここを細い2本組みのパイプにし、チェーンステーも同様の細いパイプとすることで、アクセントとなるしなやかそうなデザインでありながら高い強度を達成していると説明。

デザイン性と強度を両立したフレーム

 さらに、前後タイヤとフレームを結んだ直線を“芯”と表現したうえで、誤差なく、まっすぐに製造するのが困難であるこの“芯”の精度にこだわった点も特徴であると語った。一般的なシティサイクルでは、それほど高い精度で製造することのない部分だが、「パリ・ブレスト」では同氏曰く“芯を出した”ことにより、下り坂などのスピードが出るような場面でも安定した走行性能を実現するという。フレームに用いられている素材は英レイノルズ製の高強度パイプで、JISよりさらに厳しいEN規格(欧州統一規格)に準拠している。

高精度な組み立てで“芯”を出した英レイノルズ製のパイプ「REYNOLDS 520」を採用

「パリ・ブレスト」の試乗会も開催。剛性感や直進安定性は特筆もの
 担当者によると、「パリ・ブレスト」のターゲットユーザーは主に30代の男性。「一般的なシティサイクルよりも快適な走り心地を求める人に使ってほしい自転車だが、スポーツモデルに乗っている人の街乗り用セカンドバイクにも最適」とのこと。高い精度で設計されたフレームにより、踏み出しの軽さや安定性が一番のウリだとしている。

 発表会の終了後に開催された試乗会では、希望者全員が「パリ・ブレスト」の試乗用車両で1km弱の距離を体験走行できた。試乗用車両では、製品が5段変速のところ3段変速となっていて、シートやグリップ、ペダルなどのパーツも異なるほか、特徴的な亀甲型押しデザインのフェンダーも装着されていなかった。製品と同じ乗り味にはなっていないようだ。

 とはいえ、筆者が試乗したところでは、ペダルを踏む力がまっすぐタイヤに伝わってぐいぐい加速できる楽しさや、極低速だけでなく中高速にかけても、一切左右によれることのない直進安定性をしっかり感じ取ることができた。ガタつきは全くなく、自転車ごと飛び跳ねて着地したときでもバランスを崩しにくい、非常に剛性感のある車体に仕上がっている。

 ブレーキはフロントがキャリパー型。試乗用車両ではフロントブレーキがシングルピボットだったため、やや効きが甘く感じられたが、製品ではダブルピボットとなることから、制動力はさらに引き上げられるだろう。リアは唐突に止まることのない穏やかで静かなローラーブレーキを採用しており、ブレーキレバーは柔らかめのタッチながら、握り込んだ分だけ効いてくれるためコントロールしやすい。

 今回が「ヴェロ・ミシュラン」ブランドの第1弾モデルとなるが、今後は年1回のペースで新モデルをリリースしていく予定。シティサイクルとしては比較的高額な価格設定であることや、市場を見極めるという意味で、200台の限定販売にしたという。「パリ・ブレスト」専用アクセサリーなどの発売は特に予定していないとのことだが、クラシックな味わいが特徴の自転車であるため、このデザインにマッチしたオプションパーツを期待したいところだ。

(日沼諭史)
2012年 10月 25日